工藤遥ファンクラブツアーin長野 HARU COUNT DOWN 19→20日記 前編

くぎょう【苦行】
〘仏〙 肉体にきびしい苦痛を与え、それに耐えることによって悟りを得ようとする修行。断食・不眠など。 「 -僧」

バスツアーは正に苦行であります。まず7万円という価格設定によるきびしい苦痛、長時間のバス移動による苦痛、前日のワクワク感から来る不眠による苦痛、初対面のオタクとの共同生活という苦痛、その他ありとあらゆる苦痛が詰め込まれた苦痛ビュッフェ形式。そしてその先に待つそれら全てを吹き飛ばす工藤遥との邂逅。大量の苦痛をほんの微量の喜びが吹き飛ばしてしまう、ような気がする、というのは人生そのものにも似ています。バスツアーは苦行であり、人生であります。

最近の僕は工藤遥にそんなに興味がないと思われているようで、知り合いのうち幾人からは「工藤さんのバスツアー、よく行く気になったね」や「工藤さんのバスツアー本当に行くの?」などと言われました。それはそう的外れな意見ではなく、僕自身も少なくとも2年前ほどの熱意が自分にあるとは到底思えないのですが、僕は不思議なほどあっさりとバスツアーに行くことを決めていました。そう言われて逆に「あれ?どうしてこんなにあっさりとバスツアーに行くことを決められたのだろう」と思ったほどでした。

僕は苦行が好きなんだと思います。肉体的、精神的に自分が追い詰められれば追い詰められるほど楽しくなってきてしまうのです。痛めつけられていると生きている実感が湧いてきます。しかしそれはやはりお釈迦様も仰っている通り悟りの道とは程遠い。今回のバスツアーでも全く悟る事は出来ませんでした。ただただ僕は苦行そのものと工藤遥が大好きなのだと気が付いただけでした。大好きだ苦行が大好きだ僕は全力で走る。しまっておけない大声バスツアーレポ。開催から一ヶ月も経ってしまいましたが、僕自身の備忘録として記録しておきますので暇つぶしにでもどうぞ。 

アルマゲドン 

工藤遥バスツアー開催決定を知った時、僕自身がバスツアーに行くことは0.5秒で即決したのですが、誰と行くか、という事については少し考えました。僕は出来れば工藤遥がアイドルとして最後に開催したバスツアーで同部屋だった人物とまた同部屋にしたいと考えていました。しかし2017年の10期バスツアーで同部屋だった4人はもう誰もマトモに工藤ヲタをやっておりませんでした。

まあ当時から僕も含めて誰も「マトモ」ではなかったような気がしますが、2年という月日は更に僕達をマトモではなくしていました。一人は新たな恋をして、その女に似た他のアイドルを好きになっていました。また一人はリアル世界で多数の女のケツを追い回しておりました。もう一人は好きなアイドルが突然なんの予告も無く消えてしまいショッキングを受けていました。そして最後の一人は糖尿病が進行した上に愛車が追突事故を起こされて全損しておりました。人生いろいろ、男もいろいろ、オタクだっていろいろ咲き乱れるの。

イカれたハミ出しモノ達だが仕事の腕は確かだ」僕は映画アルマゲドンの序盤で仕事仲間を集めるブルース・ウィリスのような気分で4人に連絡しました。誰も来ないかもしれないな、と思いながら。結果としては全員二つ返事でOKでした。なんなんだコイツら、イカれてんのか、と思いました。

あらかじめ決められたトイレ休憩たちへ

というわけで同行者がすんなり決まり、申込みの手続きも何も考えずに速攻でやって酒ばかり飲んで寝ていたところ、気が付いたらバスツアー当日の朝になっておりました。案の定前日は全然寝られず、1時間ほど気を失ったのみで朝7時の東京駅に到着しました。同行者に連絡してみたのですが誰からも返信が来ませんでした。出発時間ギリギリに一人また一人と寝ぼけた顔のおじさんがLINEに返信しないままノロノロと集まって来ました。

乗り込むバスの座席表を確認すると僕達5人にあてがわれていた席は「修学旅行で不良が座る席」つまり最後列の5人席でした。「ピッタリの席じゃないか」と思ったのですが、実際座ってみると思った以上に席が狭く「これは厳しい戦いになるな」という予感がバリバリにしてゾクゾクしてしまいました。

バスが出発してすぐに添乗員のキレイなお姉さんがその日の行程をざっくりと説明しはじめました。その中でサラっと「行きのバスの乗車時間は6時間を予定しております」と言い放ったので僕は流石に聞き間違いだろうと思いました。もちろん聞き間違いでも言い間違いでもなく、バスはその後キッチリ6時間走りました。

このブログでも何度か書いている通り僕は頻尿気味です。バスツアーに最も向かない人間です。観劇やコンサート鑑賞にも向いておりません。頻尿の人間はオタクに向いておりません。しかし僕はオタクになってしまった。頻尿気味でもオタクがしたい!

バスが走り始めて2時間弱経った頃、僕の膀胱はかなりヤバめな状態になっており、ただひたすらトイレ休憩を待つ「耐える時間帯」に突入していました。そこへ添乗員さんからの無慈悲な言葉「予定が少し遅れておりますのでトイレ休憩をひとつ飛ばして他のバスとの合流地点のパーキングへ行く事にしたいのですが皆さんどうでしょうか」

僕は「どうでしょうか」の部分にかぶるくらいの速度で最後列から「無理です!」と声を上げ両手で大きなバッテンを作りました。こうしてバスは僕の膀胱の都合により本来なら飛ばすはずだったパーキングに突っ込む事となりました。バスからダッシュで飛び出して走り込んだトイレで白の太のヤツをやべ~勢いですげー出しながら「弱者が声を上げあらかじめ決められた事を覆していく、そういう時代だ…」と思いました。

バトル・ロワイアル 

バスは結局短いトイレ休憩2回と長めの昼食休憩一回、計3回の休憩のみで6時間走りました。車内では工藤遥さんの車内で流す用DVDが1時間半ほど流れました。これがまたユルい作りで「登録者100人のYouTuberでももうちょっと編集するだろ!」というくらいほとんど編集なしでダラダラ喋る工藤遥さんが収録されており最高でした。「皆さんをお迎えするウェルカム横断幕を作る」という企画でも無言でペンキに刷毛を投入して文字を書く工藤遥が映り「シャ…シャシャシャ…」という刷毛が布を撫でる音だけがする、という謎の映像が続き「我々は今何を見せられているんだ…」という感じがして最高でした。

工藤遥が喋ったと思ったら「え?Hの字大きすぎたかな、これ入るかな…」などとボソボソと言うのみで一緒に文化祭の準備をしている気分になれました。ガガガSPの祭りの準備という歌を思い出し少し感傷的になりました。あとDVD全編通して工藤さんの顔が妙にテカテカしており「肌ツヤが良い!うむ!」という感想を抱きました。

昼休憩は他の休憩に比べれば長めだったものの、30分程度でメシを食ってすぐに帰ってこい、という中々厳しいモノでした。僕はどうもそこで昼食を食べる気がせず、地元農産物販売所で見つけた2個250円のりんごを丸かじりで食べました。アメリカ人の昼食みたいになってしまいながら外の喫煙所に出て辺りを眺めました。

この時点で僕達はまだどこに行くのか知らされておりませんでした。しかし6時間もバスに乗る事、景色がどんどん山に近付いている事等を考え合わせ「我々はかなり山深いところへ連行されるのだろう。宿泊する施設の近所にコンビニなどないような場所である可能性が高い」という読みを入れて昼食休憩施設で酒とつまみを少量ではありますが購入しました。

結局この読みは残念ながら当たってしまい、リゾート価格のビールのみのホテル売店で酒を買い足す事にはなってしまうのですが、ここで購入したつまみと自宅から持参したキンミヤ焼酎には深夜助けられました。バスツアー2周目だったから出来た立ち回りだったと思います。さながら映画バトル・ロワイアル山本太郎山本太郎のやってた役、最終的に死ぬけど。

想定外の邂逅

昼食休憩のあともバスは2時間ほど走りました。うつらうつらとしたり流れ行く車窓の景色をボーッとみたりしていました。正直言って工藤遥のバスツアーに来た、という感覚はほとんどありませんでした。ただただ眠さ、硬いシート、腰の痛み、退屈、膀胱破裂の不安等に耐えている、そういう感覚でした。行き先の分からない山道をいつ着くのか分からないまま走り続けるのは精神的にも肉体的にもそこそこツライことでした。僕はボーッとしすぎてくたびれてしまいました。そんな僕の事は当然無視してバスは曲がりくねった山道をズンズン進み、シーズン外れのどんよりと曇ったスキー場に到着しました。

どうやらそこが今回の宿、そしてその日のイベントを消化する会場であるようでした。僕は「やっと着いた…」という気持ちのみでバスを降りました。疲れていて先に降りていく人々やバスの外の空気感に気付かなかったのです。パチンコ屋に並ぶ寝起きのおっさんのような顔でバスから降りるとそこでは工藤遥本人がオリジナルラバーバンドを配りながらバスから降りてくる人々に一声かけていました。僕はそんな所に工藤遥がいるとは思ってもいなかったので「うわ!いる!あ、アザス…」という最悪の対応しか出来ませんでした。工藤遥からなにか言われたような気もしますが何も覚えていません。 

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工藤遥を見たら元気が出てしまい工藤遥お手製のゲートをくぐって入場する頃には僕は元気モリモリになってしまっていました。自分でも少し恐ろしかったです。人間の身体と精神はかくも簡単に元気になってしまうものでしょうか。なんかヤバイモノを摂取した気分になりました。

遺影

やっと生工藤遥に出会えた僕はゲートを意気揚々とくぐり、僕同様心なしか元気になったように見える同行者達と共に雪の積もっていないゲレンデに申し込み番号順に並ばされました。我々は名字と番号で管理されていました。たまりませんね、この修学旅行感。僕の場合は囚人感の方が強くなってしまいますが。

工藤遥鈴木啓太氏が出てきて朝礼のようなものが始まりました。午後2時の朝礼で何をやったのかあまり覚えていませんが工藤遥さんが「おー!」みたいな事を言っていたので「おー!」と言いました。その後は工藤遥さんを中心に据えてゲレンデをバックに集合写真を撮りました。卒業文集の集合写真の出来上がりを見た友人に「お前、ワイドショーに出てくる凶悪殺人犯の写真みたいだな」と言われた集合写真写り悪すぎスキルをこの時も遺憾なく発揮しました。写りが悪いのではなく単純に僕の顔面が凶悪犯顔なだけかもしれません。

その後はツーショット撮影がありました。僕は工藤遥と写真を撮る時、常にそれを「遺影」にしたいと思って撮っています。2015年くらいからずっと。それを撮って自殺しようと思っているわけではありません。その写真さえあればいつ死んでも後悔しないような写真を撮りたいと思っているのです。あと単純に葬式で使う写真ないだろうから使える写真を撮りたいという気持ちもあります。あんまり誰も理解してくれないのですが。

当然工藤遥さん本人にもあまり理解してもらえていないようで、ポーズ指定の時に「この写真を遺影にしようと思っているので横で良い顔をしてください」と言ったら「はぁ?」みたいな顔をされ、撮り終わった後に「なんで遺影とか言うの!死なないで!」と言われました。

先程書いたように僕は別に死ぬ気はないですし、あと写真撮り終わった後に話せる時間があると全く思っていなかったのでプチパニックになってしまい、どんな顔でどう返答したら良いかわからなくなってしまいました。結局僕は真顔のまま「工藤さん、人は、死にます」と答えました。工藤さんは困ったように笑い、僕は「一体自分は何を言っているんだ」と思いすぐに席を立ちました。ツーショット会場出口に足早に向かいながら未練がましく後ろを振り向くと、工藤さんは既に次の人に向かって手を振っていました。僕の哲学はリゾートホテル地下の宴会場に吸い込まれ、そしてどこかへ消えてしまいました。<つづけ>


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