全国同時握手会 前編~スピードの向こう側編~

モーニング娘。の全国同時握手会、略してZDAに行って参りました。全て回って生きて帰って来たモノは居ないと言われている地獄のイベントZDAに。え?全国同時握手会ってなんだか知らない?知らない人のタメに最初にちょっと説明しときますね。

 

妄忍愚娘全国同時握手会・・・

その発祥は、古代中国拳法界においてその規律の厳しさで知られた功南寺で行われた修行にある。

年2回「理利伊須週間」と呼ばれる不眠不休の1週間に開催される一連の修行の中でも最も無慈悲な修行であるとされ、その苛酷さは参加する闘士の9割が死に至るという事実が証明している。

直前に予告される決闘場所まで辿り着いた者が決闘を行い、終了後まだ動けるものだけが次の場所へ向かう、これを日に3回、場合によっては4回繰り返すという荒行である。

開催場所は中国全土にまたがっており、移動するだけで名馬が3頭は死んだと伝えられている。

ちなみに、現代でも必死に努力をしているにもかかわらず報われぬことを『ZDAで鬼ループしている』と表現するのはこれに由来する。

 

 民明書房刊『世界偶像の歴史』より

 

知っているのか雷電!!雷電殿は誰推しですか!?

今回工藤遥さんは岐阜滋賀京都神戸の4箇所を回られまして、その全てに行きました。生きて帰って来たものは居ないと聞いていたのですが、恥ずかしながら生きて帰って来てしまいました。また生き残ってしまった・・・。先に言っておいた方が良いと思うんですけど、これ、別に全部回ったのは「俺が全部回らないと・・・」という使命感とか「俺が行かないとハルちゃんが寂しがるからな・・・」という義務感とかでは全然なく、ただただ「えーー!?遠くで朝から1日4回もやんのー!?なにそれ楽しそーう!キャッキャッ!!」という単純な思いからでございまして、4箇所行った俺スゴイとか4箇所行かなかったヤツはサンピン、とか一切思っておりません。

まあ、この後書いてある内容を見れば「俺がスゴクない、というよりもスゴイダメ、俺が本物のドサンピンだ」というコトがどっちにしろ皆様お分かりになると思いますが。

 

ラクーアから岐阜を目指す

ZDAの話じゃない所から始まってしまい申し訳ないのですが、どう考えてもここから俺のZDAは始まってしまっておりますのでご容赦いただきたい。まともな生活してないヤツあるあるとして「翌日早起きの予定があると寝ないで行こうとする」というのがあると思うのですが、俺もバッチリこのタイプでして寝ないで朝ラクーアに到着してお偉いオタクの方の代講をこなしました。だって、千円くれるっていうから・・・。どうせ行こうと思ってたイベントに並ぶだけで千円、こんな嬉しい事はありません。赤羽でハイボールが6杯も飲めるから、千円あれば。という乞食丸出しの思想でもって、俺はラクーアに並んだり、CDを買ったり、優先券をもらったりしました。朝から行動すると疲れちゃうのでその後は御茶ノ水で銭湯に入ったりカレーうどんを食ったり人のお悩み相談に乗ったりして楽しく過ごしました。いや、お悩み相談は別に楽しく無かったけど。

ぼーっとしているウチに優先入場列のようなモノが出来たのですが俺は「あんな暑い所に並びたくない」というクズのような思いに打ち勝つことが出来ず、結局イベントはほとんど見られませんでした。黄昏に染まるラクーアと、たまに通るクソうざったいジェットコースターの音、遠くから聞こえる楽しげな声、そこに工藤遥がいるのに俺には見えないという事実、それと何故か徹夜明けだった事が相まってなんとなくこの世の終わりのような気分になったことを覚えています。

イベントが終わると握手会とかいうモノが始まったのですが、俺はもう3年もこれをやっているのに全然慣れないので緊張しました。緊張して「あ、っす・・・、あ、っす・・・」と繰り返すだけの機械になりました。その日俺は赤い帽子をかぶっていたのですが、飯窪春菜さんに「あかーい!!」と言われました。何故かそれだけ覚えています。逆に教えて欲しいのですが「あかーい!!」と言われて「あ、っす・・・」以外の何を返せば良いのでしょうか。本当に教えてほしい。

握手が無難(?)に終わったので、その後は岐阜へ向かう車に乗るために人の家に移動しました。メシを食ったりビールを飲んだり風呂に入ったりテレビを見たりして時間を潰すと深夜2時になっていました。時の飛び方が半端じゃない。時の飛び方が半端じゃないし、俺の足の臭さが半端じゃなかった。

車に乗り込んでさあ行くぞ、テンション上げて行くぞ、と思ったのですが、既にこの時点で俺は30時間以上寝てない状態でビールを飲んでいたワケで、強烈な眠みが、、、襲ってこなかったのが逆に怖かったです。何かヤバイ領域に踏み込んだ感じがしました。それでも一応30分ほど気を失ったのですが、まどろみの中で聞こえてくる車内の会話が「ハロプロの中で彼女にするなら誰?」というモノだったので、目が覚めた直後に俺は「地獄かよ・・・」とつぶやきました。

その後は車内で起きている人間が「ドライバー」「リリース週間通じて2時間ほどしか寝ていない人」「俺」の3人だけになってしまい、脳みそが「ここでお前が寝たら死ぬぞ」という強烈な警告を発したので寝ることが出来ませんでした。気が付くと最初の目的地岐阜に到着しておりました。

岐阜で超光速の境地に達する

岐阜の会場近辺に到着したのは確か朝の6時くらいだったと思うのですが、駐車場が開いて居なかったので向かいのディスカウントショップ「ラ・ムー」の駐車場に車を止めました。車を止めて会場の様子を見に行くと既に何人か並んでおられました。異常な人間は俺達だけじゃなかったんだ・・・という謎の安心感がありました。むちゃくちゃ気怠い空気に包まれている早朝のショッピングモール前に並ぶには少し気合が足りず、俺達は車の中でダラダラする事にしました。一応車を止めさせてもらうのでディスカウントショップで買い物をしようということになったのですが、この店が異常に安くて妙にテンションが上がりました。100円でアホみたいに入ってるポップコーンと28円の栄養ドリンクを買ってウキウキで過ごしていたら、いつの間にかイベントの時間になっていた、というような感じです。ディスカウントショップ大好き!!(32歳独身男性)

ラ・ムーが大好き過ぎて優先入場券が売り切れで買えなかったので、俺達はショッピングモールの2階から工藤遥のイベントを見ることになりました。近くに居たジジイが女の子の足の間からイベントを見ようとしていました。キチガイのオタクとかではなく、単に地元のエキセントリックなジジイだと思います。世の中はアタマのおかしいヤツで溢れている。俺はニヤニヤしながらそのジジイを見つめました。プリクラを撮った時にゲームコーナーで買ったアンバサを飲みながら。ああ、俺も確かに狂っている。この狂ったセカイに乾杯。

寝不足が俺を侵食しはじめていたのですが、握手はしなければなりません。何故なら俺は工藤遥と握手するために2徹で岐阜までやって来ているのですから。決してディスカウントショップで無茶苦茶デカイポップコーンを買うために来たわけではないのです。あのポップコーン、一口目は「味薄っ!!」と思うのですが、素材本来のうまみがあるのか、何故かやみつきになって止まらなかった。止まらない!!

・・・ポップコーンのレビューはどうでもいいのです。工藤遥との握手の事を書きたい。俺は握手が苦手なクセに握手のための努力、というか言うことを考えていくというような一般的な用意を一切しない悪い癖がありまして、この日も全くのノープランで気がついたら工藤遥を目の前にしておりました。こう言うと語弊があるかもしれませんが、この日の工藤遥は非常に状態が良かった。工藤遥に状態が悪い時などないのですが、しかし、この日の工藤遥は状態が良いとしか言いようが無かったのです。元々真っ白だった頭がさらに真っ白になってしまい、俺の口から出た言葉は「・・・いやー。もう、眠いです」でした。なんなんだ俺は!!何これ!何言ってるの俺!!?何の話なのこれ!?2徹で岐阜まで行って開口一番眠いですって何!!?バカなんじゃないの!?いや眠かったけど!!それに対する工藤さんの言葉は「あー、眠いんだねー」でした。この間わずか0.2秒!ハガシが俺の肩に手を置く暇もなく工藤さんは次の人に視線を移しました。

まあ、もちろんね、これは俺が何言ってんの、って事ではあるんですけど、しかしあまりにも異常に早かったので俺は思わず「フハハ!!」って結構普通に笑ってしまいました。だってあまりにも早かったから。俺の握手を見ていた方にも「中島さんの握手早すぎ」とツイートされるくらい明らかに俺だけ異常に早かった。多分あの会場で握手した人の中で最速、っていうかあの日握手した人の中で最速だったんじゃないでしょうか。俺が最速の男だ。これがスピードの向こう側なのか。天羽”セロニアス”時貞クン・・・これがそうだと言うなら俺はこんな所へ来とうはなかった!!

 スピードの向こう側がとんでもないセカイだったので、流石の不死身ゾンビ体質の俺も多少のショックを受けてしまい、フラフラと歩きショッピングモールの駐車場を望むベンチに腰掛けてタバコを吸いました。何か考えようと思ったのですが、しかし、俺にはもう何か考えるような気力も体力も残っていませんでした。持っていたポップコーンをポリポリ食いながらだだっ広い駐車場を眺め「これが岐阜か・・・なんもねぇな岐阜・・・」と思いました。

俺が打ちひしがれている間に、工藤さんは見事にCDを完売させておられました。エライ!スゴイ!良かった!俺の打ちひしがれになんて関係なく世界は回るし、神は個別の事象に対して何かするような事はないのです。打ちひしがれてたって仕方ない、俺は次の目的地に向かうしかないのだ。強く生きよう。それはそれとして腹が減ったな、滋賀でなんか食いたいな。そう思いながら俺はいつまでも、無駄にデカイポップコーンをポリポリしたのでした。

<つづけ>