誕生日の朝

2017年4月29日、土曜日、東京は快晴。

工藤遥が京都で卒業発表をする少し前、俺は神保町の公園で悪友と酒を飲んでいました。

 ちょうどその日は北朝鮮からミサイルが飛んでくるとか飛んでこないとかで、

ビルの谷間の公園で真っ昼間から甲類焼酎のお茶割りをグビグビ飲みながら

「今ここにミサイル飛んできたらどうする?もうさ、飛んでくるの見えた時点で逃げられないワケじゃん?死ぬじゃん?俺ならアレだね、もしも…を踊りながら死にたいね。もしも…を踊っている影としてコンクリートに刻まれたいね。あと(以下自主規制)」

 


工藤遥【ハル!ステ#2】

 

などとハイパー不謹慎な話をして、ゲラゲラ笑いながら踊っていました。

「もしもこの星が1日で最後迎えるとしても面白い話して忘れさせて欲しい

・・・・・おねがいっ!!!」

昼休み時、公園で弁当を食いながら一服する肉体労働者の皆さんの横で響く下品な笑い声。

安いアルコールで麻痺させた脳と、ふらつく身体、輝く笑顔。

恋をしてから4年弱、俺は工藤遥への恋から逃げる事にすっかり慣れきっておりました。

真面目に考えれば考えるほど絶望の闇に沈んでいく恋から逃げ出して、

自らの両目を潰し、なにもかもを見ないようにしていました。

自分の人生も、工藤遥の人生も、この世界の事も、なにも見たくありませんでした。

 

しかし、工藤遥は見据えていた。

俺には工藤遥が考えている事の全ては分からないけれど、

少なくとも彼女は自分の人生を見据えてはいたワケです。

俺が焼酎で脳を焼いて踊っている間に、彼女は。

快晴だった空にはにわかに暗雲が立ち込めはじめていました。

 

急な雨が降ってきて、ベロベロに酔っ払った俺達を濡らしました。

少し雨宿りをしてから

「雀荘にでも行くかー」

という事になり、コンビニで酒の補給をしました。

そこのトイレを借りていた悪友の一人が慌てて出て来るのが見えました。

ズボンを上げるのもそこそこに、そこそこに、っていうかもうアレはズボン上げてなかったんじゃないかな。

うん、上げてなかったと思う。ケツ丸出しでトイレから飛び出してきたそいつは

「工藤さん、卒業するらしいっすよ」と言いました。

 

 

 俺は自分でも驚くほど驚きませんでした。

別に工藤さんの卒業を予期していた、というワケではありませんが、しかし、

「工藤遥はいつ卒業してもおかしくない」と思っていたからだと思います。

または、何も考えていなかったからだと思います。無。

最初、その報をケツ丸出しの酔っぱらいから聞いた時、

驚きや悲しみよりむしろ開放感を感じました。

俺は「何か」から開放されるような気がしたのです。

一体「何」から開放されるのか、今考えると全然分かりませんが、その時はそう感じました。

実際に工藤遥が卒業発表をするシーンを見ていなかったからというのも、もちろんあると思います。

現実としてその事実を受け止めていなかったような気もします。

とはいえ「工藤遥が卒業する」と聞いた時、俺は最初に

「やったー!!!」と思ってしまったのです。それは事実です。

 

上擦ったテンションでその後麻雀を打ち、俺はボコボコに負けました。

京都にいる工藤遥の事や、卒業公演までのスケジュール、どこの現場に行こうか、

などの事を考えていたような気がします。

あと、テンションが上がっていました。

「うっひょー!祭りだーーー!」

みたいな感じです。俺はお祭りが好きなのです。

 

麻雀が終わってからも朝まで酒を飲みました。

その次の日も、またその次の日も酒を飲みました。

気がつくとゴールデンウィークの間中、俺はずっと酒を飲んでいました。

その間に工藤遥が卒業を発表する映像がインターネットに上がったりしましたが、

俺はそれをマトモに見る事もなく酒を飲み続けました。

5月5日には個別握手会があり、そこに行ったのですが、

そこでもあまり工藤遥が卒業する実感みたいなモノはありませんでした。

5月6日にはシリアルイベントというものがあり、そこでも握手をしたのですが、

ヘラヘラと酒を飲んで曖昧な笑顔を浮かべただけでした。

シリアルイベントが終わった後、中野や新宿で酒を飲んで、

気が付くと俺は33歳の誕生日の朝を迎えていました。

新宿のど真ん中で泥酔し、喫煙所で一人でした。

少しも寂しくなく、むしろ心地が良かったのを覚えています。

 

2006年の誕生日に「誕生日の朝」というタイトルで酷いブログを書いてから11年。

11年前のその日は、紺野あさ美の卒業コンサートの日でした。

 

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モーニング娘。に入ったら、必ずモーニング娘。ではなくなる日が来ます。

最初に辞めた福田明日香から、一番最近辞めた鈴木香音まで、例外無く。

俺は、少し卒業脱退に慣れすぎているのかもしれません。

市井さんや矢口さんや藤本さんの脱退の辺りで完全に心を壊されているのです。

誰かがやめるとなると、その場で真っ裸になって、白いふんどしバッチン決めて、

「まつりじゃーーーー!ワッショイワッショイ!!!」

というテンションになるように身体に教え込まれている。自己防衛反応として。

 

白フンの件はそれはそれとしても、ハロプロメンバーが途中でアイドルを卒業することを当然だと思っている所があるのです。

生まれた人間は必ず死ぬ。咲き誇る花もいずれは散る。だからこそ美しい。

そう思っている所があります。

もちろん、一生アイドルを続ける女性がいても良い。もしかしたらそれは、散る美しさよりも更に美しいかもしれません。

でも、俺は少なくともハロープロジェクト所属のアイドル、特にモーニング娘。にそれは出来ないのでは無いかと思っています。

まず単純に激務過ぎる。例えば50歳とか60歳になってあのスケジュールはこなせません。どう考えても。

とはいえ、激務の問題は俺の想像を超える尋常じゃないタフネスを持った女性の出現や、

「高齢のメンバーは握手会や公演数を減らす」等の措置、

もしくは医学やテクノロジーの進化による身体自体の強化によって乗り越えられるかもしれません。

全身義体で踊る100歳の石田亜佑美、見たい。すげえ見たい。生田衣梨奈とか100歳でも生身でバク転してそう。

しかし、モーニング娘。には個人の身体強化では乗り越えられない「メンバーの加入」という枷があります。

誰も辞めなければ最終的にモーニング娘。のメンバーは数百人、数千人、数万人になります。

誰かが辞めなければ適正な人数を維持出来ません。

それでは加入がなければいいじゃないか、と思うかもしれませんが、

加入を無くして全く固定のメンバーでやっていったとして、

果たしてそれはモーニング娘。だと言えるのでしょうか。

俺はそれをモーニング娘。だと思わないような気がするのです。

これは、あくまでも「俺が」そう思わないだろう、って事なので

「加入も脱退もせずにずっと同じメンバーで一生活動して欲しい」

と思う方の考えはそれはそれで尊重しますが、しかし、現実問題として難しいと思っています。

 

「モーニング娘。になっちまった以上、いつかは辞めるんだし、今回の工藤さんの卒業に関しては本人の希望もかなり入ってるみたいだし、まあ、良いんじゃないの」

と、俺の今の気持ちとしてはそういう事になります。

人の心を失くしているように思うでしょうか?

俺も少しそう思いますが、しかし、今は実際にこれ以上の感情が全く湧いてこないのです。

卒業が近付いたり、卒業前の最後のイベントに行ったり、卒業公演を見たりすれば、

もう少し感情が湧き出して来るのでしょうか。分かりません。全然分かりません。

卒業公演で堰を切ったように感情が溢れ出して号泣したりするのでしょうか。

俺がそうなっている様子が全くもって想像出来ません。

 

そもそも、俺は「アイドル工藤遥」に恋をしたワケではなく、「工藤遥」に恋をしたと思っているのです。

・・・いや、あの、分かりますよ、めちゃめちゃ気持ち悪い事を言っている自覚はありますし、

「アイドルの工藤遥しか知らねぇだろ」

っていうのもその通りだと思うんですけど、でも、やっぱり気持ちとしてはそうなんですよね。

だから、工藤遥がこの世からいなくなるワケじゃない「アイドルからの卒業」には大した意味はないような気もするんです。

「アイドル」じゃなくなると近くで見る機会とか握手する機会とかは減る、もしくは無くなるでしょうけど、

そもそもそういう「接触」ではこの恋は実らない、という事は最近だんだん分かってきたので。

ホント最近ですけど。それは。分かったのは。

「女優をやる」というかなりふんわりした進路ではあるにせよ、

工藤さんは芸能界に残るパターンの卒業ですし、

そうなるとガチ恋的にはむしろそっからが本番、みたいな所もあるわけです。

これから、押し寄せて来るのです、試練が。

「劇団員と浮名を流す工藤遥」とか「六本木で奔放に遊ぶ大女優工藤遥」

とか、これから創造され得る全ての並行宇宙での出来事への怒りと恐怖が溢れてきてそれが無限に発散するのです。

恐ろしい。

「アイドル」では無くなった工藤遥さんのキラキラした未来を思うと同時に、

俺自身の未来も思ってしまうのです。

工藤さんの未来については何の心配もないのです。

俺には女優として成功するかどうかは分かりませんが、

例えそれがどうなろうと、工藤遥さんは幸せな人生を歩むと思うのです。

翻って、俺はどうか。

 

工藤遥さんには、本当に感謝しています。

例えそれが一時の事でも、幻想だったとしても、俺に「人を愛する心」を思い出させてくれたので。

工藤遥さんの人生と俺の人生は別のものであって、あまり関係はないのだけれど、

でも、確かに工藤遥さんは俺の人生に影響を与えていて、

そして、それは俺だけじゃなくて他の全ての工藤遥好きにも言えて、

更には工藤遥好きと工藤遥好き、モーニング娘。好き同士が相互に影響を与えたり、

特別な関係になったりしていて、そういう様を眺めていると

「ああ、本当に綺麗だなあ」

とそう思うのです。

俺はあまり人間関係が得意な方じゃなくて、

「引きこもって仙人みてえに暮らしてえなあ」

と思っているのですが、そんな俺が見ても美しいと思います。

少しその環から外れた所でそれを眺めているだけだから単純に美しいと思えるのかもしれませんが。 

 

俺は俺の人生を生きなくてはならないのです。

工藤遥さんがそうしたように。

 

でも、あと半年は工藤遥を出来るだけ見に行きたいな、と思っています。

出来るだけ、ですけど。そもそも半年後に生きていないかもしれません。

途中でくたばるかもしれないけれど、だから今すぐ振り絞っていきたいと思っています。

 

今はおそらく開催されるであろうバスツアーを楽しみにしています。

バスツアーの日に全員乗ったバスが異次元に吸い込まれてそのまま漂流バスツアーになるENDを期待しております。

異次元に吸い込まれるのはちょっと難しそうなので、

個人的にホテルの部屋から泥酔して失踪、ジャングルで狼に育てられるENDでも妥協します。

工藤遥さんに迷惑をかけるとアレなので、探さないで下さい。

よろしくお願いします。

 

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ロンリーな思い出を抱きしめて夢の最終の列車に乗れ!!!!

 


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