ガチ恋おじさん

ガチ恋おじさんシーズン3最終回アニメ版(セリフ起こし)



東北の大地に立ち、ワルプルギスの夜(即売握手会)と対峙するなかじ(中島)


キュゥべえ「数多の世界の運命を束ね、因果の特異点となった君なら、どんな途方もない望みだろうと、叶えられるだろう」
なかじ「本当だね?」
キュゥべえ「さあ、中島なかじ――その魂を代価にして、君は何を願う?」
なかじ「私…」
なかじ「全てのガチ恋を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全てのガチ恋を、この手で」
キュゥべえ「――!」
キュゥべえ「その祈りは――そんな祈りが叶うとすれば、それは時間干渉なんてレベルじゃない!」
キュゥべえ「アイドルそのものに対する反逆だ!」
キュゥべえ「はっ」
キュゥべえ「――君は、本当に神になるつもりかい?」
なかじ「神様でも何でもいい」
なかじ「今日までガチ恋と戦ってきたみんなを、希望を信じたガチ恋おじさんを、私は泣かせたくない。最後まで笑顔でいてほしい」
なかじ「それを邪魔するルールなんて、壊してみせる、変えてみせる」
なかじ「これが私の祈り、私の願い」
なかじ「さあ!叶えてよ、インキュベーター!!」


どこか、想像上のビジネスホテルの一室で、平松に日本酒を振る舞われるなかじ


ひらまつ「なかじさん。それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの?」
なかじ「たぶん」
ひらまつ「未来と過去と、全ての時間で、あなたは永遠に戦い続けることになるのよ」
ひらまつ「そうなればきっと、あなたはあなたという個体を保てなくなる」
ひらまつ「ヲタ卒なんて生易しいものじゃない。未来永劫に終わりなく、ガチ恋を滅ぼす概念として、このアイドル現場に固定されてしまうわ」
なかじ「いいんです。そのつもりです」
なかじ「希望を抱くのが間違いだなんて言われたら、私、そんなのは違うって、何度でもそう言い返せます。きっといつまでも言い張れます」
落合「いいんじゃねぇの」
落合「やれるもんならやってみなよ」
落合「戦う理由、見つけたんだろ?逃げないって自分で決めたんだろ?なら仕方ないじゃん。後はもう、とことん突っ走るしかねぇんだからさ」
なかじ「うん。ありがとう落合ちゃん、ロン毛、キモイぞ」
ひらまつ「じゃあ、預かっていた物を返さないとね」
ひらまつ「はいコレ(キンブレを2本差し出す)」
ひらまつ「あなたは希望を叶えるんじゃない。あなた自身が希望になるのよ。私達、全ての希望に」


世界中のガチ恋おじさんを救う、アルティメットなかじという概念


アルティメットなかじ「あなた達の祈りを、絶望で終わらせたりしない」
アルティメットなかじ「あなた達は、誰も呪わない、祟らない。因果はすべて、私が受け止める。だからお願い、最後まで、自分を信じて」


アルティメットなかじ「もういいの」
アルティメットなかじ「もう、いいんだよ」
アルティメットなかじ「もう誰も恨まなくていいの。誰も、呪わなくていいんだよ。そんな姿になる前に、あなたは、私が受け止めてあげるから」


宇宙空間


前田「…!?」
前田「ここは…?」
キュゥべえ「なかじがもたらした新しい法則に基づいて、宇宙が再編されているんだよ」
キュゥべえ「そうか――君もまた、時間を越えるガチ恋の使い手だったね」
キュゥべえ「じゃあ一緒に見届けようか――中島なかじという、存在の結末を」


キュゥべえ「あれが、彼の祈りがもたらしたソウルジェムだ」
前田「そんな…」
キュゥべえ「その壮大過ぎる祈りを叶えた対価に、なかじが背負うことになる呪いの量が分かるかい?」
キュゥべえ「一つの宇宙を作り出すに等しい希望が遂げられた」
キュゥべえ「それは即ち、一つの宇宙を終わらせるほどの絶望をもたらすことを意味する」
キュゥべえ「当然だよね?」



アルティメットなかじ「ううん。大丈夫」
アルティメットなかじ「私の願いは、全てのガチ恋ヲタを消し去ること」
アルティメットなかじ「本当にそれが叶ったんだとしたら、私だって、もう絶望する必要なんて、ない!!」


キュゥべえ「なかじ」
キュゥべえ「これで君の人生は――始まりも、終わりもなくなった」
キュゥべえ「この世界に生きた証も、その記憶も、もう何処にも残されていない」
キュゥべえ「君という存在は、一つ上の領域にシフトして、ただの概念に成り果ててしまった」
キュゥべえ「もう誰も君を認識できないし、君もまた、誰にも干渉できない」
キュゥべえ「君はこの宇宙の一員では、なくなった」






という、ガチ恋おじさんシーズン3の終わり方をしたかったのですが、出来ませんでした。
なぜなら、俺はアニメのヒロインじゃないし、これは現実だから。悲しいけどこれ現実なのよね。
インキュベーターはいないし、俺を思って何度も時を巻き戻してくれるほむらちゃんも居ないから。
俺は、この渇いた現実の、孤独なおじさんだから。
だから、こんな終わり方は出来ませんでした。
アルティメットガチ恋おじさんにはなれませんでした。
他のガチ恋おじさんも、自分自身も救えず、残ったのは傷ついたおじさんです。
ボロッボロに傷ついたおじさんです。
ただ戦場から裸足で全速力で逃げ出して、なんとか最前線から帰還しただけの、敗残兵です。


でも、俺は一人だけ、最前線から逃げる道中で、ガチ恋おじさんを助けてあげる事ができました。
全然、助けようと思って助けたんじゃありません。
たまたま、全速力で逃げる俺がぶつかったのがきっかけになった、という程度ですけど。
それでも俺は、一人だけ、ガチ恋おじさんが助かるのを目前で見ました。今も見ています。
俺はとにかく恐ろしくて、逃げる事に夢中だったので気付いていなかったのですが、
あそこから逃げる途中には、たくさんの別の希望が転がっていたのかもしれません。
あの戦場はもしかしたら、たくさんの希望が満ち溢れた場所だったのかもしれません。
そんな場所を抜けて、前田や平松やその他の知り合いをあそこに残して、
逃げる途中で見た、奇跡のような希望に目をやられて、逃げて逃げて、
俺がたどり着いたのは、鬱蒼としたジャングルでした。そこにはまた、絶望がありました。
別の絶望のように見えますが、しかし、おそらくは、同じ絶望が違う見え方をしているだけのようです。
このジャングルで、とにかく生き残る為に、俺はまた、泥水を啜ろうと思います。
この1年、泥水を飲んで生きてきましたが、少なくとももうしばらくは、また泥水生活を送らなければならないようです。



ガチ恋おじさんシーズン3はそうして終わりました。
絶望から抜けだした先は、また新たな絶望の世界でしたが、そこで生きていくしかありません。
俺はまた、孤独になりましたが、しかし、生きていくしかありません。
もし、シーズン4があるとするならば、そこから始まるんだと思います。
シーズン3までは、希望を追っていました。工藤遥とどうにかなりたい、という希望を。
その希望が叶わないという絶望を描いていたのですが、
もし、シーズン4があるとすれば、それは「誰にも愛されない、誰も愛せない」という絶望そのものを描くシーズンになりそうです。
絶望そのものに絶望するのです、俺はこの先!
絶望が深まれば深まるほどユーモアは加速するので、面白くはなると思いますけど。
その絶望の先に希望が差せば、こんなにロマンティックな展開はありませんが、おそらく、そうはならないでしょう。
なぜなら、これは現実だし主人公は俺だからです。
とはいえ、一年前、俺が一年後にこんな風になっているとは全然思っていなかったので、
この予想も外れるかもしれません。外れて欲しい、出来れば。


結局ですね、ガチ恋おじさんは愛を探す男の物語なんです。
1年前、前田だけ工藤遥に名前を覚えられた、という下らない事実から始まったガチ恋おじさんシリーズですが、
1年後、前田だけピーして、ピーがピーになって、また同じ構造で俺がモヤモヤする事になるとは思いませんでした。
(ちょっと言えない事が多いので、ピー音で隠しました)
シーズン1の最初のシーンがもう、伏線だったのです。なかなかやるよねー、ガチ恋の神様!
演出がニクいよねー!





今、物語はループを始める!
絶望と孤独!強敵との再戦に子鹿のように震えるガチ恋おじさん!
闘え!ガチ恋おじさん!生き残るために! 
たった一人で闘いぬくんだ!




ガチ恋おじさんシーズン4 coming soon...